サービスエリアから彼が電話して予約した海岸沿いのホテルに着いたのは、もう11時を過ぎていた。
ホテルの自動販売機でビールとおつまみを買って、部屋に上がる。
早朝からの仕事の後の長時間の運転に疲れたらしく、桑谷さんが頻繁にあくびをしていたから、私は笑って、先にシャワーを使わせた。
「寝て。そして、明日元気になって」
私が言うと、彼は拳で口元を押さえながら、うー・・・と唸った。
「・・・抱けるかと思ったのに」
「元気になってからにして」
「・・・はい」
よっぽど眠かったのだろう、彼はシャワーから上がると、下着をつけただけでベッドに潜り込み、そのままコテンと眠ってしまった。
私もシャワーを浴びて、ふかふかのバスローブを着込んでから、大きな窓際の一人用ソファーに座り込んだ。
ベッドライトだけをつけて部屋の電気を消す。
冷蔵庫からビールを出して、窓枠に置いた。
そして暗い海を見た。
月が出ていて、もうすぐで満月だった。
空気が澄んでいて明かりが海に落ち、波頭だけが時々キラキラと光る。
缶から直接飲みながら、心底寛ぐのを感じた。
ここ最近で、こんなに心が静かなのは初めてだ。一人の静かな時間。私はこれを切望していたんだ。
ビールの苦い味が口の中に広がる。
ただ黙って窓からの黒い景色を眺めながら、深夜を過ぎるまでそうしていた。
規則正しい寝息が聞こえる。私はソファーの上で体を捻って、シーツの中の彼を見詰める。



