呆気に取られて二人で固まっていると、桑谷さんの大きな体が居間に飛び込んできて更に驚いた。
「――――――あ?」
思わず変な声が出た。
楠本は立ち上がりかけたまま、私はビール缶を握ったままで固まっている。それを、肩で息をして汗をかいている桑谷さんが、交互に眺めた。
突っ立ったままで、状況を観察しているようだった。
「・・・・何事?」
やっと金縛りから解けた私が言った。あまりの驚きで、まだ心臓がドキドキしている。
桑谷さんは、荒い呼吸を大きく深呼吸をして鎮めようとしていた。
そして額の汗を腕でぬぐいながら、はあー・・とため息をついた。
「・・・・畜生、騙された・・・」
「何?」
全く状況が飲み込めない。
中腰のまま止まっていた楠本がゆっくりと体を起こして、呟いたのが聞こえた。
「・・・・ああ、酔いが一気にさめた・・・」
同じく。
ビールの缶をテーブルにおいて、体ごと桑谷さんに向き直る。・・・えーと、とりあえず、初対面だし紹介したほうがいいのよね。
「あー・・・楠本、こちらは・・」
私が言いかけると、追いかけるように、桑谷さんが言った。
「桑谷です。申し訳ない、驚かせてしまって」
立ったまま楠本に向かって頭を下げた。それを見て、同じように会釈を返しながら楠本が言った。
「あ、これは失礼。楠本と言います」
顔を上げて、改めてお互いが観察しあっているようだった。それぞれがどのような印象を持ったかは興味があるけど、今はそんな事聞ける雰囲気じゃなさそう・・。



