・・・・何だ、こいつ。私をまるで変人みたいに。自分に惚れないヤツは女じゃないっていうような態度に憮然としたけど、それよりも懐かしい名前に反応するほうが先だった。
「仲間さん!あのダイナマイト美人の仲間さん!彼女、元気?」
私の派遣会社が楠本の勤める保険会社に近かった頃、同期だといいながらこいつが連れてきた美女を思い出した。
2、3回一緒に飲んだかな。最初の1回で私と意気投合して、たくさんお喋りをしながら飲みまくったのだ。あれは楽しい宴会だった。
「去年本社に異動になった。噂では、子供が出来たらしい」
眉毛を上げてみせる。あんたと仲間さんの仲で、そんな大事な話を噂で信じるのか?
「噂?」
「はいはい、わかったよ、事実だ。社内ではまだ内緒ってだけ」
楠本が笑った。
・・・・ショックだ。仲間さんだって、私と同じ年。しかも、いつの間に結婚を??それについて根掘り葉掘り聞いていたらいつの間にか夕方がきて、窓の外で色を濃くしていた。
「もうお腹はいっぱい?」
「あー・・・もういらねぇなあ・・・。でもチーズとかあったら欲しい」
炭酸の抜けたビールの入ったグラスを揺らして楠本が言うので、私は冷蔵庫を指差した。
「私も。ありがと」
「・・・客を使うなよ」
仕方ねえな、と彼が立ち上がったと同時に、バタンと凄い音がして、玄関のドアが開いた。
その勢いに古いアパートの私の部屋が揺れたくらいだった。



