女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 ま、とにかく桑谷さんにメールだけでもしときましょうか、と思って充電していた携帯を取りに寝室へ行った。

 そしてディスプレイを見ると、新着のメールを一つ発見する。

 おおお~!!楠本!!

 男の親友の名前を見て、その興奮と喜びに、ストーカーに見つかったなんて気持ち悪いことも吹っ飛んでしまった。

 来週の水曜日は都合良い?とのメールにオッケーと返信を送る。

 11月に入って最初の水曜日は、懐かしい友達に会える。後4日で、30歳になった楠本に会えるのだ。そう思って機嫌よく出勤準備をしていたら、桑谷さんにメールをするのを忘れていた。

 百貨店の北階段を降りながら思い出したけど、また夜に会えるからと結局メールはしなかったのだ。

 確かに、それは私の不注意だった。



 月曜日、お昼の休憩で店長が売り場を出た後、珍しく売り場の電話が鳴った。

 ギフトセンターからの注文や、自社の営業さん、他の百貨店のうちの店からの商品の借り出しなどでこの電話は使うが、たまにお客様からの電話もある。

 閑散期に鳴るのは珍しいから、てっきり営業さんからだと思って電話を取ると、交換手がお客様からです、と告げたから、少し緊張した。

 ・・・・なんだろ。クレーム?配送の訂正?電話での注文?呼び出しを待つ3秒くらいの間にだだーっと色々考えた。

 どうぞ、と交換手の声がしたので、笑顔を作って受話器に話す。

「お待たせいたしました、〇〇百貨店、桃源堂です」

「・・・えーっと・・・小川さんて販売員の方、いますか?」

 男性、結構高い、でも知らない声、と頭で考えた。自動的に返す。