女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 私の知らないところで動きがあったと判ったのは、その数日後のことだった。

 まるで冬の夕暮れみたいに、それは音もなく近づいて、私をじっと観察していたんだった。

 私は気付かず毎日をさらさらと過ごし、仕事と部屋を往復していた。繁忙期が近づいてくるデパ地下も少しずつ賑やかになっていて、毎日その店の様子を楽しんだりしていたのだ。

 ちっとも気付かずに。

 音もたてずにそれは、ある日いきなり形をともなってやってきた。


 遅番の日、桑谷さんに俺は残業するからと気をつけて帰っての言葉だけ貰って、一人で部屋へ戻った時だった。

 いつものようにアパートの入口の郵便受けを覗く。

 独身の一人暮らしはあまり使わないだろう郵便受けを、私は普通に使っていた。

 新聞を取っているし、通販での買い物も多いので郵便受けは必要だった。ただし、鍵はつけているし、名前は出していないけど。

 ダイレクトメールと夕刊、カードの請求書と一緒に白い封筒が入っていた。

 宛先も差出人も何も書いていない白い封筒を手に取って、裏表を何度もひっくり返しながら、他のものと一緒に部屋へ持って上がる。

 一度座ってしまうと面倒臭くなって後回しにしてしまい、そうなると1ヶ月は放ったままになってしまうので、帰るとすぐに郵便物は整理することにしている。

 鍵をいつもの場所に投げて、テーブルに郵便物を置いた。

 そして冷蔵庫から水を出して飲み、まず請求書を開ける。

 ・・・よーし、よし。オッケー。これで今月も黒字で家計が締めれる。月末に落とされる金額だけ確かめて、ゴミ箱に入れた。