「・・・前の仕事を引きずっている。自分が捕まえた犯罪者が、俺に仕返しを企んでいるらしい」
あぐらをかいて床に座っていた。
私は目を丸くして、彼を見た。
「はい?」
片足を立てて同じく床に座った彼が、後ろの壁に頭をつけた状態で私を見下ろした。
「だから、前の仕事を―――――」
「引きずっている、それは判ったわ。えーと、そうじゃなくて、具体的にどういう事なの?」
話を引き取って強引に先にすすめる。
仕返しを企むとか私には馴染み深いんだけど・・・とか思ってる場合じゃない。
だって、彼が話しているのは正真正銘犯罪者なのだ。
「・・・犯罪って、何の罪で?」
恐る恐る聞く私をじっと見たまま、彼はぼそりと言った。
「ストーカー」
・・・ストーカー。あらまあ、何てことよ。
呆然としていると、観念したらしく、桑谷さんがゆっくり話し出した。
「27歳の時だ。俺は友達と興した調査会社で受けた仕事で、一人のストーカーを窃盗容疑で警察に引き渡した。当時はストーカーに対する法律もなかったし、女性が怯えてちゃんと被害届を出さなかったこともあって、ストーカー容疑では捕まえられなかったんだ」
黙って、頷く。部屋の端と端に座り込んで、真正面から話を聞いていた。
「警察では何かが起きないと動いて貰えない。だから女性の家族が俺らを雇った。相手の男を徹底的に調べて、弱みを握り、女性からヤツを離そうと考えたんだ」



