女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 ペットボトルをシンクに置いた。片手で瞼を揉んでいる彼に体を向ける。

「・・・説明が聞きたいんだろう?」

 彼への返事として首を振った。

「もういいわ、必要ない。不快な思いまでして聞きたくない。あなたが話したがらないことを無理やり聞き出したって、更に不快になりそうよね、あなたのその態度だと」

 一度頭を振って深呼吸をする彼を見る。怒りを抑えているのだと判った。

 私と視線をあわせ、表情を消した彼が言う。

「俺が君を大切に想っていることは判っているはずだ。あんな・・・職場で、それを盾に取るなんて」

 彼は細めた目に怒りを込めてギラギラ光らせていた。

 私はフン、と挑戦的に顎を上げる。

「それはごめんなさい。―――――私は、目的を達成するためなら使えるものは何でも使うのよ」

 相手と同じように腕を組んでシンクにもたれ、付け加えた。

「我慢なんてしないわ」

 舌打ちをした彼がじっとこちらを見詰めた。眉間に皺をよせて、瞳を細めて。

 怒りを全身から発散していた。

 私は乾く唇をなめて湿らせる。

 彼と対峙している。

 空気は緊張してピリピリと音がしそうだった。

 無意識にもう一度舐めた舌先を彼が目で追うのが判った。