彼女は、あ、という声を出して、まだ真っ赤なままふんわりと微笑んだ。

「彼から・・・お話はいろいろ聞いてます。仲間さんにそっくりな女友達がいるんだって。二人とも、本当にお綺麗です」

 でた、仲間さん。笑える。ちゃんと私も綺麗だなんて、いい子だわ。

 私は彼女に近づいて、少し声を潜めてから言った。

「・・・楠本を怒ってやったのよ。あなたをトマトって呼ぶだなんて、失礼にもほどがあるって。ちゃんとやり返さなきゃ駄目よ?あの男には食ってかかるくらいで丁度いいんだから」

 すると更に真っ赤になった花嫁は、頬を押さえたままでふふっと笑った。

「大丈夫です。あの・・・私、実は初めて楠本さんにそう呼ばれた時に、彼にもあだ名をつけ返したんです。心の中で、ですけど」

 その言い方に、芯の強さを感じた。しかもこのイントネーションは関西弁?柔らかくて耳に心地よい。

「あだ名?・・・うどの大木とか、バカ営業とか、そんなの?」

 いえ、と小さく手を振って、私の耳元に顔を近づけた。彼女の柔らかで繊細ないい香りが私を包む。

「・・・・・きゅうり、です・・・」

「――――――――」

 パッと振り返って彼女を見た。

 花嫁は頬を真っ赤に染めて、キラキラした黒目で弾けるような笑顔をしていた。

 ――――――――きゅうり。・・・・楠本が、きゅうり。あのイケメンの、背も態度も知能レベルも高い男が、きゅうり!!!あの緑色したぶつぶつでひょろひょろの!!!