女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



「吹っ切れたでしょう?」

 小さな毛糸屋さんを出て駅まで歩きながら、私は彼を振り返る。

 私の後ろからついてきていた桑谷さんは、優しく笑った。

「・・・そうだな」

「挨拶は、大事よ」

「・・・俺、君の親御さんにしてないけど」

「あ、うちのはいいの。遠いわよ、沖縄は。また来年にしましょう」

「え」

「それにうちの親、いきなり来そうな気がするしね・・・」

 なんせ行動的なうちの両親は、目下暇なのだ。そして金がある。ある日部屋に戻ったら両親が二人でお茶なんかしてそうだ・・・。

 コートのポケットに両手を突っ込んで歩いている彼を待って、腕を絡める。

「部屋、どうする?」

 うーんと唸って彼は空を見上げる。

「・・・買ってもいい。俺、仕事頑張って金稼ぐよ」

「うん?貯金は?」

 彼はひょいと肩をすくめた。

 そして話してくれたのは、今回ストーカーを撃退するために色々な費用がかかった現実だった。

 私は知らなかったけど、フリーで動く太郎さんを雇うのは相当高いらしい。なんせ細川に証拠が残る罪を犯させて、自分たちは逃げ切らなければならないし、私を無事に守らねばならなかった。今回の事は依頼主がいるわけではないから、桑谷さんの自腹だったと。

「・・・マジ?すみません、何かめちゃ責任を感じたわ、私」