「吹っ切れたでしょう?」
小さな毛糸屋さんを出て駅まで歩きながら、私は彼を振り返る。
私の後ろからついてきていた桑谷さんは、優しく笑った。
「・・・そうだな」
「挨拶は、大事よ」
「・・・俺、君の親御さんにしてないけど」
「あ、うちのはいいの。遠いわよ、沖縄は。また来年にしましょう」
「え」
「それにうちの親、いきなり来そうな気がするしね・・・」
なんせ行動的なうちの両親は、目下暇なのだ。そして金がある。ある日部屋に戻ったら両親が二人でお茶なんかしてそうだ・・・。
コートのポケットに両手を突っ込んで歩いている彼を待って、腕を絡める。
「部屋、どうする?」
うーんと唸って彼は空を見上げる。
「・・・買ってもいい。俺、仕事頑張って金稼ぐよ」
「うん?貯金は?」
彼はひょいと肩をすくめた。
そして話してくれたのは、今回ストーカーを撃退するために色々な費用がかかった現実だった。
私は知らなかったけど、フリーで動く太郎さんを雇うのは相当高いらしい。なんせ細川に証拠が残る罪を犯させて、自分たちは逃げ切らなければならないし、私を無事に守らねばならなかった。今回の事は依頼主がいるわけではないから、桑谷さんの自腹だったと。
「・・・マジ?すみません、何かめちゃ責任を感じたわ、私」



