白髪で、白い肌にピンク色の頬、70代くらいに見えた。
ドアが開くチリンという音で、彼女は顔を上げる。
そして彼を見て、その次に私に視線をうつし、可愛らしく微笑んだ。
「・・・・ついに、会えたのね」
よく通る声だった。その発声の仕方に、彼がだぶる。
「こんにちは。小川まりと申します。突然、すみません。どうしてもお会いしたかったんです」
私が近寄って挨拶すると、すっと立ち上がって手を差し出した。私はそれを両手で包む。
眉と口元が桑谷さんと同じだった。キラキラさせた瞳を三日月型に細めて嬉しそうに笑う。何でも見通せるような深い色をした瞳で、それは、たくさんの悲しみを経たからだと判っていた。
「あなたが息子に笑顔をくれたのね。本当にありがとう」
桑谷さんは入口のところで立ったまま、一言も話さずに二人のやり取りを聞いていた。彼のお母さんは息子に一度目をやると、改めて私に微笑みかける。
「桑谷時江と言います。突然彰人が帰ってきたから、驚いたの。でもすぐに判ったわ。大切なひとが出来たんだって」
そしてまっすぐに私の目を見て言った。
「・・・あなたに惹かれたのが、よく判るわ。なんて強い瞳でしょう」
私はケラケラと笑った。この親子に必要なのは、無防備な笑顔だと知っていた。
そして彼女の手をそっと包んだまま、少し腰を落として目線を合わせる。
「私たちの結婚を許して下さいますか?」
小さな声で、それだけを聞いた。
その小さな可愛らしい婦人はハッキリと頷いて、深深と頭を下げた。
「まりさん、こちらこそ、宜しくお願いいたします」



