女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



「・・・ハロー?」

 問いかけると、動く気配が伝わってきた。何かに座ったようだった。・・・ベッドが軋む音かな?

 そして大きく息を吐く音が聞こえた。長らく呼吸を忘れていたらしい。

『―――――――・・・・届け出すのに、2時間もかからねーぞ』

 小さく声が聞こえた。

「その後で、指輪を買いに行きたいの」

『うん』

「実は、どれが欲しいか決めてあるの」

『・・・なら5分で済むな』

「そしてその後で、新婚初夜を迎えるの。2時間、要るでしょ?」

『・・・だったら、2時間じゃ足りねーな』

 そう言いながら、桑谷さんは笑い出していた。

 電話の向こうで私の夫となる人が、上機嫌で笑っていた。

 私は両親の家の方を見て、大きく手を振った。うまくいった、の合図の代わりに。



 沖縄から戻った私は、なんと驚く大金を手にしていた。

 最初の夜の晩餐で、両親が私に一冊の通帳を手渡してこういったのだ。

「お前のお金だよ」

 私は黙って受け取り、中を開けて腰を抜かすかと思った。そこに書いてあった金額は504万円。

 一度見て閉じ、また見直した。ゼロの数が間違ってるんじゃないかと思って。

「・・・・一体、何?」

 閉じた通帳をつき返しながら、私が父に聞くと、父はそのまま母を振り返った。