女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 だけど今回の事では、助かった。この両親に育てられていて、乗り切れたのだと思っている。

 私がぼんやりと桑谷さんのことを考えていると、父の声が流れてきた。

「・・・返事が、まだなんだろう、その様子だと」

 それもバレてるらしい。父は、家の裏から続く堤防の先を指差した。

「電話、しておいで。自分の気持ちを伝えてきなさい。それをちゃんとするまで今日の晩ご飯はなしだ」

 電話。彼に。桑谷さんに。

「はーい」

 私はオリオンビールを飲んで立ち上がる。仕方ないわねって顔の母にウィンクしてみせて、携帯電話だけを持って、裸足で歩き出した。


 後ろで両親が見ているのが判っていた。

 今度は私からプロポーズだ。


 堤防の一番先に、あぐらをかいて座った。

 目の前に沖縄の海が広がり、風が髪を揺らす。


 夕方の5時半で、今日は正月の変則シフトで彼が昼から休みなのを知っていた。

 しばらくじっくりと波が揺れるのを見詰めた後、おもむろに彼に電話をかける。

 呼び出し音が耳の中で響く。このタイミングを失ったら、次があるか自信がない。出てくれますように。

 どうか――――――――


 呼び出し音が7回目、私の胸に不安が忍び込んだ時、ふいに電話が繋がった。

『――――――もしもし?』

 桑谷さんのよく通るハッキリとした声が鼓膜を打つ。

 思わず体が震えた。