だけど今回の事では、助かった。この両親に育てられていて、乗り切れたのだと思っている。
私がぼんやりと桑谷さんのことを考えていると、父の声が流れてきた。
「・・・返事が、まだなんだろう、その様子だと」
それもバレてるらしい。父は、家の裏から続く堤防の先を指差した。
「電話、しておいで。自分の気持ちを伝えてきなさい。それをちゃんとするまで今日の晩ご飯はなしだ」
電話。彼に。桑谷さんに。
「はーい」
私はオリオンビールを飲んで立ち上がる。仕方ないわねって顔の母にウィンクしてみせて、携帯電話だけを持って、裸足で歩き出した。
後ろで両親が見ているのが判っていた。
今度は私からプロポーズだ。
堤防の一番先に、あぐらをかいて座った。
目の前に沖縄の海が広がり、風が髪を揺らす。
夕方の5時半で、今日は正月の変則シフトで彼が昼から休みなのを知っていた。
しばらくじっくりと波が揺れるのを見詰めた後、おもむろに彼に電話をかける。
呼び出し音が耳の中で響く。このタイミングを失ったら、次があるか自信がない。出てくれますように。
どうか――――――――
呼び出し音が7回目、私の胸に不安が忍び込んだ時、ふいに電話が繋がった。
『――――――もしもし?』
桑谷さんのよく通るハッキリとした声が鼓膜を打つ。
思わず体が震えた。



