女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 1月とは思えない柔らかい風が吹いて、繁忙期で疲れた私の心身を癒す。のんびりと両親とビールを飲んでいて、まっさらな頭になったようだった。

「お前の心は、決まったのか?」

 父を見た。笑い皺を顔中一杯に作って、穏やかに私を見ていた。

「それを決めるために、ここにきたんだろう?」

 ――――――やっぱり、バレてたんだ。

 可笑しくなって笑う。私はいつまでも、この人たちの子供なんだ。離れて暮らしても、すべてお見通しな感じがした。

「・・・多少、危険な人なの。いろんな意味で。だけど、大切にしたいと思ってるのよ」

 父は頷いた。言葉はなかった。

 母も頷いた。だけど、こちらは忠告があった。

「なんであれ、彼に危険がまとわりつくなら、まりが用心することよ。教えたことは忘れてないでしょうね?」

 わたしも頷いた。

 報道カメラマンの母は戦場や危険な国にも飛んでいく。私はそのせいで、小さな頃から一通りの護身術と警戒心、そして物事へのドライな見方を学ばされたのだ。

 一番大事なのは、生き抜くこと。

 生きてさえいれば、いつかかならずいい事はあるのだから、と。

 一人になっても立っていられること。

「大丈夫よ」

 笑って、言った。

 去年、トチ狂ってしまって自殺しかけたことは内緒だ。あれは、本気で恥だった。両親には絶対に言えない酷い有様。原因となったバカ男に仕返しが出来て、私はラッキーだったのだ。