女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 父と母が顔を合わせた。二人とも別に驚かずに、静かな、それでいて面白がっているような顔をしていた。

 暫くして、父が言った。

「判った」

 そして母も続ける。

「式はあげるの?」

 私はしばらく無言になった。・・・・えーっと。うん、大変あっさりとした会話になってしまったわ。

「・・・式を挙げようとは思わない。ってか、他に聞くことないの?どんな人か心配じゃないの?」

 父がビールを飲んで美味しそうに笑う。

 そして私の方をくるりと向いた。

「お前は、30歳だろう?」

「そうね」

 あなたたちが教えてくれた生年月日が間違ってなければね、と心の中で突っ込む。成り行きがわからなくて仏頂面になった娘を優しく見て、父が笑う。

「もう十分、自分で色々経験したはずだ。お前が選んだのなら反対や心配なんてしない」

「・・・はあ」

「それに」

 母が父の後を続ける。

「一生で、結婚は何回も出来るのよ。一度くらい失敗したって大丈夫」

 ・・・・・・はい、まあ、確かに。おっしゃるとおりですが。

 とてつもない興奮や反応を期待していたわけではない。だけど、沖縄に引っ込んで毎日海を見る生活を始めてから、確実に両親の性格は丸くなっている。

 ・・・・こんなに何も突っ込みがないとは思ってなかった・・・。何だったのかしら、私の悩んだ日々は。

 拍子抜けした状態で、改めてオリオンビールを飲んだ。