女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 タクシーの止まった音で判ったらしく、父が外へと迎えに出てきた。ロッジ風の平屋は白いペンキで塗られた壁が光り、その前に立つ父の笑顔を照らしている。

 背の高い、いつでも笑顔の父を抱きしめた。小さい頃からの父の匂いがした。

 私と似ている父が、顔を覗き込んで言った。

「・・・・おや、前より美人になったようだね。いいことがあったのかい?」

 綺麗な標準語で話す。

 私は声を出して笑って、荷物を玄関に投げ入れた。

 奥から母が現れた。

「お帰り、まり。何が欲しい?」

「ビールビールビール!!泡盛でも可!」

 言い捨てて、手だけを母に振り、海に面した裏庭に回る。

 そこではデッキチェアに父が座って、既に寛いでいた。

 私は靴を脱ぎ、薄いパーカーだけを羽織って横に並ぶ。やがて飲み物をもった母も来て、1月の太陽を浴びながら、皆で外で乾杯をした。本州では雪も降っているのに、ここではまだ野外でビールが飲めるほどに温かい。

 父と母は待っているようだった。

 私がいきなり帰ってきたのが、正月の帰省ではないと思ってるようだった。

 だから私は、母が慎重に注いだビールの泡を舌で舐め取って、おもむろに口を開いた。

「結婚しようと思うの」