でも今日は…ひとことだけ、一昨日のこと謝らなきゃ。
謝れたらもう、友哉には近づかない。
もうグラウンドに行ってスケッチしたりもしない。
大好きだけど……絶対ずっと大好きなままだけど……この想いは固い檻の中に閉じ込めてしまうんだ。
朝からずっと謝ろうと思いながら、話す機会がなくて、とうとう昼休みになってしまった。
意を決して、教室の後ろで野球部の友達とふざけている友哉に近づいていく。
「友哉…」
おずおずと声をかける。振り向いた友哉は、眉間にシワを寄せた不機嫌そうな顔をしていた。
「お前、もう体だいじょうぶなのかよ?」
なんだか怒ってるみたい。
「ごめん…一昨日は迷惑かけて。あの…保健室、連れてってくれて、ありがとう」
「いや、そんな……」
友哉が何か言いかけた時、周りにいた友達が大声ではやしたてた。
「なになにぃ〜、一昨日、走り込みに行ってる間に何かあったのか?」
「長いこと戻って来ないと思ったら、そーゆーことだったのォ?」
友哉の頬がパァッと赤く染まった。
「そーゆーことって、どーゆーことだよ、このヤロー!」
一番近くにいた奴を捕まえて、ヘッドロックを決める。
「ちょっ、ヤメロって…ギブ、ギブ…」
ドッと笑いが起こる。またたく間に、その場はプロレス会場と化した。
誰と誰がタッグ組んでるのかわかんないけど、すさまじい技のかけ合いが始まった。
――はぁ…ま、いいか。一応謝ったし…。
タメ息ついて、自分の席に戻る。
席に着こうとしたら、教室の前扉の所から誰かが呼びかける声がした。
「先輩ぃ! 大野先輩、長谷川先生がぁ、美術室まで来てください、って!」
両手をメガホンみたいにして叫んでいるのは、美術部1年の高橋。
なんで呼びに来るのはいつも高橋なんだ? よっぽど暇なのか?
別に教室ですることもなかったので、美術室に向かった。

