大学を卒業する日。
俺は袴に袖を通し、いつもの大学に通った。
卒業式を終え、サークル仲間と集まってしゃべった際、「俺たちも卒業か…」と1人が呟いたので、卒業という言葉に妙に現実味が増して、仲間と涙を流した。
その時、後輩も涙を流してくれたので、嬉しいような、寂しいような不思議な感情に襲われた。
どちかにしよ俺たちは卒業なんだ。
教授に今までのお礼をいう為、部室を出ようとしたその時だった。
プルルルルル
携帯がなった。
サークル仲間は、「なに?佐本の彼女~?」と囃し立て、俺を肘でつついた。
ばーか。母さんからだよ。と、その場を流し、電話に出た。
「もしもし?」
「佐本明美さんの息子さんで間違いないですか?」
聞こえてきたのは母さんではなく、男の人の声だった。
「はい…そうですけど。母がなにか?」
「申し遅れました。私、広島県警のものです。息子さんは今、どちらのほうに?」
「大学ですけど…。え、母がどうかしたんですか?」
「すいません。お母さん、実は借金取りに追われてますよね。佐本さんあんまりにも返さないみたいだから…」
「…はい。それでなにか?」
「実はね、借金取りの方が、痺れ切らしちゃって。佐本さんと言い争いになったみたいで。」
「はい…」
「佐本さん、相手の方殴っちゃったみたいで。向こうも佐本さん殴っちゃって。」
「…」
「打ち所悪かったみたいで、今、病院に搬送しています。今からすぐこれますか?佐本さん、意識不明の重体です。」
あまりに淡々と言うからビックリした。
警察という職業はこんなに殺伐としているんだ。と考えると、目眩までした。

