「どうしたエリ?そんな怖い顔して?」
怒りの表情に包まれてる彼女と対象的にエセ王子は平然としていた。
どうやらケイトとは、エセ王子の名前で、彼女の怒りの矛先は、エセ王子に向けらているらしい。
そして、彼女が放つ重い空気。
そう、私は、バイトの面接に来ているはずだったのに…どうやら男女の修羅場に巻き込まれていた。
「どうした?じゃないわよっ!撮影が終わって仕事片付けて久しぶりにマンションに逢いに行ったらもぬけのからだしっ!電話もメールも無視!ここだって貴方の友人に聞いて知ったんだからっ!」
彼女は、エセ王子に怒りをぶつけながら、感情が高まっていたのか涙を流していた。
「エセ王子!最低っ!」
つい心の中で彼女に援護射撃をした。
彼女の言葉を聞く限りどうやらエセ王子は、女性の敵のようだ。
「あぁ…悪い。」
エセ王子は、変わらず冷静にしていた。
あれだけ、怒りの感情を受けとめておきながらエセ王子の言葉から反省とか罪悪とかそんな思いが一切感じられなかった。
彼女は、一呼吸して、「さよなら。」
とエセ王子に言い、次は今まで二人の修羅場に巻き込まれていた私に、
「ごめんなさい。ビックリさせて。」
と軽く謝罪をして店内を後にした。
彼女が最後私に謝罪した時に、見せた笑顔は、どこかスッキリした様な、寂しそうな不思議な笑顔だった。
そして綺麗だった…
ふと気づいた。
「え~っただ面接に来ただけなのに、女子高生に間違われるは、修羅場に巻き込まれるは、まさか厄日?ってこの微妙な空気の中私を残して消えないでっ!」
心の中で、神に救いを求めていた私。