そんな黒川家を出た俺に何を遺したかなんて検討もつかない。
それに、俺は今まで麗人に対して負の感情を抱いていたが、実のところ麗人と言う人間に対して知っている事は、あまりにも少ない。だから今回の荒木先生が麗人から預かったモノを引き取る気になったのか自分でも上手く説明出来ない。とりあえず、シャワーでも浴びようと思いバスルームに向かう途中、ドアの向こうから聞き覚えのある鼻歌が耳に入っ来た.
この嫌な予感は、ここ数年何度となく現実に変わった。
俺は、恐る恐るドアを開ける。
「おはようございます!」
元気の良い爽やかな朝の挨拶が寝癖頭の俺の耳に響く。
「おはよう。ってお前日曜日の朝から何やってんの?」
目に映る見慣れた女性にため息混じりに現状の説明を求めた。
「はぁ~っ…見て解りませんか?掃除ですよ。私平日は、昼間大学があるし、それに誰かさんは、女遊びに忙しそうだから掃除する暇ないでしょ?」
彼女は、俺よりも深くため息をついて嫌味をたっぷりブレンドして説明してくれた。
女遊びに忙しい?俺に変わり掃除をしていたのは、「桜井笑美花」、俺が経営するCafeBar「みさき」で二年前からバイトしている女子大生だ。
「そりゃどうも。せっかくの日曜日、たまにはデートの一つでもしてみたら?」
少し嫌味を言ってみた。
「なら継人さんがデート連れて行って下さい♪」
余裕の笑みを浮かべあっさりと俺の嫌味をスルーした。
実言うと、俺は彼女が苦手だ。多分理由を挙げれば30分ぐらいかかると思うが、一番の理由は自分でも解らない。
ドラキュラがニンニクを苦手な様なモノだと思う。
「忙しいからパス。」
笑美花の冗談か本気か判断し難い申し出を断った。
笑美花はさほど気にせず手際よく掃除を続ける様子を見ると冗談だったのだろう。