やがて、高校を卒業を迎える事になった俺は、麗人に呼び出された。
書斎に呼ばれたのは、4歳の時に呼び出された時以来だった。
あの時まだ幼かった俺は、麗人が放つ独特のオーラに脅えて何も話す事は出来ず、麗人への憎みの気持ちだけが産まれた。
年老いたとはいえ、麗人が放つ独特の威圧感は、変わらない。
変わったのは、俺だ。話を切り出したのは、俺からだ。
「お久しぶりです。お変わりなくお元気そうで何よりです。大変失礼だと思いますが用件だけ手短にお願いします。」
淡々と話す、俺の目をただじっと見つめる麗人は、
「あの弱々しかった幼子がこんなに立派になったか…簡単な話だお前には、黒川家の次期当主としての才能も資格もある。周りの人間もお前を推す声が圧倒的だ。そこで、お前の意見を聴きたい。」
とある程度予想をしていた内容を通達して来た。
麗人と目を合わせ、
「次期当主の話ならお断りします。」
一言で即答した。
「そうか…ならお前には、高校を卒業したら黒川家を出て行ってもらう。勿論お前が今持っている黒川家での序列も権利も全てを法的処置を取り剥奪させてもらう。理由は、簡単だ。私が次期当主を誰に決めたとしても、必ずお前を次期当主に添えて理を得ようとする輩が現れる。それは、歴史が物語っているし理解できるだろう。」麗人の反応に少し拍子抜けした。
もっと黒川家の当主の座について語ったり、変に説得されると思っていた。
「初めからそのつもりでお断りしました。なら手続きの方は、お手数ですが宜しくお願いします。」
俺は、ずっと黒川家を継がない事が一番の復讐だと思っていた。
誰よりも、黒川家のいや麗人の血を色濃く継いだ俺が裏切ることが麗人を苦しめると思っていた。
麗人の俺を見る瞳が一瞬優しい光を宿した気がした。
「話は以上だ。強くなったな継人。もう会う事もないだろう。」
麗人は、そう言うと書斎を出て行った。
初めて名前を呼ばれたと同時に一生の別れをした。
現に、麗人を見たのはこれが最後だった。
こうして、俺は無事黒川家から解放されたのだ。