ただ兄達は、異論はあったが麗人に反発はしなかった。
麗人は、自分の子供達にさえ畏怖されていた。
だから幼く弱かった俺は、兄達の不満の絶好の捌け口だった。
毎日広い屋敷で独り泣いていた。
目に映る全てのモノが涙で滲んでぼやけて見えていた。
そんな俺をいつも優しく慰めてくれていたのが麗人の妻紗耶香だった。
祖母は、いつも僕を優しく抱き締めてくれた。
眠れない夜は絵本を読んでくれたり、
兄達の子供にいつも避けられて独りぼっちの俺を公園に連れて行ってくれたり。
微かにだが覚えている。
ただ、そんな俺の黒川家での唯一の味方もすぐに奪われた。
その時の記憶は、今も忘れない!
初めて、人を憎む感情が俺に芽生えたあの日を…
それは、俺が4歳になって間もなくのことだ。
いつも通り独りぼっちで庭の庭園で遊んでいると、見たことがない女の人が敷地の中にいた。
子供ながらに、彼女が今まで自分が知る女性と違い何か可憐な華の様に綺麗なモノに見えた。
暫くすると、執事が一人現れて、麗人の書斎がある別宅へと一緒に消えて行った。
一瞬彼女と目が合った様な気がしたが多分きのせいだろう。
その日の晩、祖母は、僕の部屋に現れて急に僕を強く抱き締め、泣きながら謝った。
「継人ごめんね…あの人を許してあげて。」声は震えてて、とても弱々しかった。
幼い俺でも解っていた。
大好きな祖母を泣かせたのが誰かなんて…
祖母が泣き止むまで立ち尽くすことしか出来なかった。
暫くして、祖母は泣き止み部屋を出た。
それっきり祖母の声を聴く事は無くなる。