どれだけ時間を重ねてもこの哀しみが癒えることはないだろう
どんな景色を観ても瞼を閉じるといつも君がいる
どんなに色んな音が刻まれても一人になると君の笑い声が聴こえて来る
そんな自分に嫌気がさす…
君を深く傷つけた俺にそんな資格は無いから。

四月最初の日曜日
ピピッピピッピピッ
携帯の着信音が部屋中に鳴り響く!
重たい瞼を開き、ベッドから出てテーブルの上の携帯を取る。
液晶には、「荒木先生」と表示されていた。
荒木先生? 一瞬戸惑ったが俺の優秀すぎる脳は、寝起きにも関わらずすぐに答えを導き出してくれた。
「もしもし、おはようございます。お久しぶりですね。荒木先生…」
通話ボタンを押し荒木先生に挨拶をした。
荒木先生は、7年前に亡くなった祖父の古くからの友人で、俺が通っていたS学園の理事長を務めていた。
「日曜日の朝早くにすまないね。君と話すのは、麗人の葬式以来だね…」
携帯の向こうから、低くかすれた声が聞こえる。
「いえ…黒川家を出た身ですから、中々僕から連絡を取れずすいません。今日は、どういったご用件で?」
他所他所しく荒木先生の電話の真意を探る。
「そうだね…実を言うと昨夜、生前麗人から預かっていた荷物を見つけてね…そのうちの一つを君に引き取って欲しいと思って。」
荒木先生は、僕に応える様に早速話の本題を語り始めた。
「すいませんが、祖父の件でしたら兄達に連絡をとられてみてはいかがでしょうか?」
先生の申し出を丁重に断った。
「ははっすまないね。けどこれは、継人君に遺したモノだと思うんだ。」
俺に?!
黒川家を棄てた俺に祖父が何を遺したのか皆目検討もつかない。
それに、俺は…祖父麗人を忌み嫌っていた。
先生は、黙る僕を無視して話を続ける。
「突然の話しに驚くと思うが私は、明日から入院しなくてはいけないから、出来れば今日中に引き取りに来てくれないかい?」
俺は、先生の無茶な申し出を断ることも出来たが了承して電話を切った。
単純に麗人が俺に遺したモノに興味が沸いた。
久しぶりに育ったS市に帰る事を決意する。