「あっ!大丈夫ですっ。」
とっさに出た言葉だ。
彼を一目観て解った。
「王子様だっ!」
透き通る様な白い肌に、優しく包み込み尚且つ吸い込まれそうな大きな緋色の瞳。
白い歯。
自分が今まで出逢って来た異性とは明らかに違った。
王子様は、
「良かった。」
と優しく微笑み、辺りをキョロキョロ見渡した。
「あのーっどうしたんですか?」
王子様の行動が気になってつい質問してしまった。
「ちょっと人探しみたいなもんかな?」
と彼はまた微笑んでくれた。
「人探しですか?」
「そっ。知人にアルバイトしてくれる大学生を紹介してもらったんだけどね…ほらっうち看板とか出してないから迷ってないかと思ってね。」
と王子様は、振り返る。
「迷ってましたよ!あなたが探していた女子大生は、私ですよ!」
心の中で叫んだ。
「あのお店の名前なんて言うんですか?」
王子様に舞い上がっていた私は、探し人が自分だと切り出す前に、お店の名前を尋ねてしまった…
王子様と目が合った。
急な問いかけにビックリしたのか驚いた表情だ。
暫くして王子様の口が開いた。
「みさき。」
「みさきって言うんですね。素敵な名前ですね。」
と誉めると、
「あっ…うん…ありがとう。」
と今度は、さっきの笑顔と変わり、少し寂しそうに笑ってみせた。 王子様は、私から視線を反らすとまた周りをキョロキョロ見渡した。
「あの~っ。今さら何ですけど、多分貴方が探してる女子大生って私です。」
申し訳なさそうにカミングアウトをする私に
「えっ?!本当に?ごめんね。女子高生だったんだ?」
目を丸くして、私を見下ろす王子様。
彼の発言が私の中の何かのスイッチを押した。
「あのっ!私大学生です!」
つい大きな声を出してしまった。
状況を整理すると、今まで彼の目には、私の事が女子高生に見えていた。
=(イコール)女子大生に全く見えていなかった。
そう考えると、今までのドキドキとかキラキラとか全部ぶっ飛んだ。