継人さんはまた、私に背を向け歩き出す。
私は、ただその場所に立ち尽くし継人さんの背中を見つめ動くことが出来ない。
また、私の時間が止まった。
「何やってんの?お前も一旦店に寄るだろ?」
継人さんの声が耳に届いた。
その瞬間時間が動き出す。
私は、少しずつ離れていく背中を追いかけた。
「じゃぁ私、まだみさきでバイトしてていいんですか?」
継人さんの、左手を掴みひき止めた。
「頼りにしてるよ。」
継人さんは、振り向き私にちゃんと聴こえる様にハッキリとした口調で私の目をしっかりと見つめて、私が求めていた答えをくれた。
「はいっ!」
私は、継人さんが自分の存在を必要としてくれたことが嬉しくてついまた大きな声をだした。
そんな私を見て、
「やっぱりお前って忙しいな。」
と小馬鹿にした。
「はいはい。私の喜怒哀楽はコンビニみたいなもんですよ。」
とまた少しすねてみた。
「うん。だから退屈しないかな?」
一瞬継人さんの表情が柔らかくなった様な気がした。
月の光と街頭に照らされ逆光になっていたからかも知れないが、今まで見た継人さんの表情の中で一番優しくて一番格好良かった。
ほんの一瞬だが見とれてしまった。
見とれた事を気づかれない様に、
「退屈しないって人を玩具みたいに…」
とツッコミをいれた。
継人さんは、悪い悪いとイタズラな笑みを浮かべまた歩き出す。
私達は、お店まで特に会話もなく帰りつく。
その間、私の頭の中は、さっきの継人さんの姿が何回もリピートされていた。
先に言葉を出したのは私だ。
「そう言えば継人さん大丈夫ですか?」
店内の照明のスイッチを押している継人さんを気遣う。
「あぁ大丈夫。」
スイッチの音と同時に店内に灯りが灯り、「ドサっ」とみさきで聞いたことのない何かが落ちた音が響く。
とっさに音のなった方向へ視線をうつす。
そこには、床に倒れている継人さんの姿がある。
「大丈夫ですか?」
ふらつきながら立ち上がる継人さんに駆け寄る。
「悪い。少し飲み過ぎたみたいだね…」
必死で笑顔を作ろうとする継人さん。
「何言ってるんですか?大丈夫ですか?」
「悪い。ベッドまで肩かして。」
ほんの数分前とは、明らかに声のトーンが変わっている。
まるで精一杯振り絞って言葉を発した様子だ。