家族の定義について深く考える人なんて限られている。
血の繋がりが有れば家族なんだろうか?
私は違うと思う。
それは、単なる血族。
私の考える家族の定義は、思いの深さと時間が深く関わる。
「さぁっ、育った環境からですかね?リアさんの事だから多分俺がKUROKAWAの人間だって調べはついてんでしょ?」
「悪いとは思ったけど、入社時に調べさせてもらったわ。」
「別にいいですよ。それを知った上で自分を雇用して貰った事に寧ろ感謝してますから。」
それから、継人は自分が育った黒川家の事を順を追って丁寧に私に説明してくれた。
幼少時に、祖母を無くしてから始まった、過剰なまでの英才教育。
それによって引き出された才により、黒川家の後継者争いに巻き込まれた事。
そんな黒川家に嫌気がさし、高校進学を期に家を出た事。
麗人さんから時期当主へ指名されたがそれを辞退し、黒川家から解放された事。
自分の過去を話す継人の口振りはまるでnewsを読み上げるキャスターの様に言葉に感情が込められてなかった。
話を聞いて、継人の並外れた才能の根元を知った。
麗人さんの真意を確認してないから断言は出来ないが、結果として継人は黒川家から解放され自由になり、こうやって今私の前にいる。
継人が過ごした厳しい過去に心を痛めたのと同時に、こうやって今、唯一の愛息が目の前にいる現実の尊さを噛み締めた。
「そう。辛い話しをさせたわね…」
「いえ。」
「こんな辛い思いをさせた両親を恨んでる?」
私の質問に対して、継人はすぐには答えず、煙草に火を着けて一服した。
そして、煙を口から吐き出す。
「恨んでないと言ったら、嘘になりますね。けど…」
「けど?」
「俺よりも不幸な境遇の奴は一杯いるし、今さら不幸の比べ合とかには興味ないし、起こった過去の事を責めて何も変わらないって事は、これまでの経験で嫌と言う程解ってますから。」
継人は財布を取り出すと一枚の100円硬貨をテーブルの上に置いた。
「それに、この100円玉と一緒ですよ。」
私が言葉の意味を理解する前に継人がまた話し始めた。
「どんな人間もどんな現象も表と裏があるんだと俺は思ってます。例えば、俺が母親に生まれて直ぐに捨てられたって表があるならば、それと対応する様に捨ててしまった理由が裏側にあるんだと思います。」