私に気遣う様に継人は、話しを続けた。
「リアさん、初めてあった時、俺が空を見ててロマンチストってからかった事覚えてます?」
「えぇっ。」
「そいつが空を眺めるの好きだったんですよ。」
「そっか…」
「はい。空だけじゃなくて、花とかの植物とか桜とか海とかそんな他愛もないモノを好きな奴でした。」
初めてあった時BARで見えた影が少しずつ姿を現した。
「リアさんには、感謝してますよ。」
「突然どうしたの?」
いつも、小生意気で挑発的な態度の継人とは少し違っていた。
「いや、あの頃の俺は、本当に生きる目的なくて、あいつがいない世界に何の魅力も感じて無かった。けど、あの日貴方に拾われて、こうやって忙しい毎日に身を投じて、自分の身体や脳を酷使していると少なくとも生きてる実感がします。」
継人は、軽く頭を下げてグラスに残ったワインを飲み干した。
亡くなった人が継人の友人か恋人かなんて解らないけど、継人にとって掛け替えの無い存在なんだと理解出来た。
自分も、過去に同じ様な経験があるから痛い程良く解る。
いや、私の場合は、幸いにも二人共生きていて、一人とはこうやって一緒に食事まで出来ているのだから違うのか。
継人の長い人生で、今後その人物と会話を交わしながら食事を摂る事等無いのだから。
「そうね。けど、まだまだ新しい役員の椅子を準備するには、時間がかかりそうね。」
「そうですね。ここからは、俺の勘だと、選挙戦みたいなモノになりそうなんで、長くかかりそうです。数字を伸ばすより難しいですね。」
私は、出来るだけ継人の生きるモチベーションを上げようとそんな台詞を吐いたが、継人の中では、今後本社内の権力戦争に巻き込まれる事なんて理解しているのだろうし、その為の準備も既に初めているのだろう。
その若さで、大人の組織の汚さを味合わせたくはないが、それが継人の生きる糧になるなら、私はただ黙って見守る事に決めた。
もしかしたら、麗人さんも継人と同じ様に、大切な誰かを失った悲しみが深過ぎて、仕事にいつも没頭してたのかも知れないかと考えてしまった。
レストランを出た継人は、夜の街へと消えていった。
親が子に教えてあげれる事の少なさを今更だが思い知る。
私は、私に出来る事を継人にするだけだ。