継人は、締めていたネクタイを少し緩め大きめの深呼吸をついた。
「でも流石に、東城グループの役員や幹部の皆さん。一癖も二癖もありそうですね。」
継人は、一体何手先まで物事を考えて行動しているのか興味が湧いた。
継人の教育係にと、夫の代から専務を勤めてくれていた人をつけた。
継人は、彼に案内されるまま部屋を出た。
ネクタイはしっかりと締め直されていた。
夕方、専務から定時報告の連絡を受けた。
報告の最後に、彼は私に不思議な事を告げる。
「彼が何者か解りませんが、リアさんは凄い人間を拾って来ましたね。」
声を聞く限りでは、凄く上機嫌の様子だ。
「そう?あんまり甘やかさないでね。」
「ははっ甘やかす?それは無いです。多分貴方や私の想像以上に彼は、きっと大物になりますよ。下手したら、そう遠く無い未来、私は彼の部下になっているかも知れませんね。」
継人との間に何があったかは、想像出来ないが、彼が継人を偉く気に入っている事に素直に安心した。
それから、一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月継人に任せたお店は、順調に業績を伸ばしていった。
私は、継人に任せるお店の数を増やして見た。
半年が経った頃には、彼に任せた店舗全ての数字が上がり、役員会の決定でグループ傘下のナイトレジャー産業を担当していた会社の部長に継人は、就任する事になった。
それまでの間、私と継人の関係を勘ぐらせない為にとなるべく接触を避け、継人との会話も短い業務連絡のみだったが、社内は、継人の噂で溢れていて、あの子の様子が手に取る様に伝わって来た。
噂なのでどれだけ真実なのか解らない。
どれも、信じ難い事ばかりだったから。
例えば、継人は仕事人間で24時間仕事づくめのサイボーグだとか、あるお店の店員がヤクザとトラブルになった時に、自分の指を切り落とそうとしてそのトラブルを丸くおさめたとか、ライバル店舗の有力キャストを何人も引き抜きその店舗を潰したとか、他にも全ての店舗のTOPキャストは全員継人の虜なんて噂まであった。
目に見える物では、働くキャストの為の夜間保育所の設立と美容院の設立を会社に進言し、先導して行っていた。
それと、有用な自分の部下を何人も昇格させて、半年の間にもう一店舗高級クラブをオープンさせた。
どうやら、私は専務が言った様にとんでもない大物と契約してしまったみたいだ。