翌朝、継人は、時間通り本社ビルの私の部屋に来た。
私は、継人に今から開かれる定例会議に一緒に出席して、役員と幹部達に紹介する事を説明した。
会議の時間は、9時なので、それまで受け持つ事になる店舗の資料を渡した。
継人は、部屋に設置された来賓用のソファにかけて、真剣に資料に目を通していた。
30分ぐらいして、継人に資料を返されたので、少し驚いたが、本当に驚いたのは、彼の暗記能力だった。瞬間記憶能力とまではいかないが、私が聞いた全ての質問に、一語一句間違えずに正確に答えるのだ。
継人に興味本位で暗記のコツを聞いて見た。
「売り上げの数字は、例えば昨年度の数字をベースに何割増しか減か覚えれば良いですし、働いてるスタッフの名前や慣例企業何かは、点で覚えるよりも、円で覚える様にすれば、後は芋ずる方式ですよ。」
さらりと答えてくれたが、継人の底知れぬ才能の片鱗を見た様な気がした。
それから、定例会議でも、私の予想通り、急な継人の本社採用に皆ざわついていたが、継人はそんなの意にも介せず予想通りだった様で、鞄に入れてあった自分で作成して準備してあった資料を一人一人に配り、自分がここ数ヶ月で上げた実績を説明した。
終いには、自信満々の顔で、
「二年もしない内にここにいる皆さんは、私に感謝し尊敬する事になると思います。」
なんて言うんだから、数年分の冷や汗が出まくった。
役員の一人が、そんな継人の生意気な態度を大声で指摘して、注意する。
「そうですね。私もこのような大きな一流企業の役員や幹部の方々を前にして、緊張してしまい、それを紛らわす為にこの様な横暴な態度を取ってしまった事をお詫びします。皆さんが見た通りまだ右も左も解らぬ若輩者の私ですので、何卒、ご指導こ鞭撻の方宜しくお願い致します。」
継人は、一同に深く頭を下げ自分の非礼を詫びた。
継人の謝罪もあり、どうにかその場は収まった。
私の部屋へ戻った後、継人の取った行動を強く注意した。
「いや、あれくらいの方が今後やりやすくなるし、解り易いですから。」
継人は、全く反省してないみたいだ。
どう考えても、幹部や役員に目をつけられると思うのだが。
「確実に何人もの人間に目をつけられたわね。」
「それが今日の目的でしたから。」
「えっ?」
「いや、最初から敵か味方か解ってた方が俺的には、助かるんですよ。」
継人は、不敵な笑みを浮かべている。