まるで、綺麗にカッティングされた氷細工の様に冷たく脆いモノの様に感じ取れた。
「そう。それにしては、さっきは変に不機嫌じゃなかった?」
「あぁっ。あれですか、演技ですよ。」
「演技?」
「そっ。めんどくさそうだったしあの様な態度を取ったら、どっちに転んでもお店を出るかなって思って。まっこんな展開になるとは思ってませんでしたけど。」
継人の話す言葉一つ一つが冷たい。
確かに、継人の言う様に私は、直ぐにお店を出た。
それに、彼の言葉振りから、それによって何通りかのパターンを考慮していたと言う事に驚きだ。
「ねぇ、貴方ご両親は?答えたくなかったら答えなくて良いわ。」
「いません。産まれて直ぐ母親に捨てられたので、父の事は、顔も名前も知りません。母型の祖父母夫婦に育てられました。」
継人は、案外素直に私の質問以上の答えを聞いた。
「そう。そこまで話さなくて良いのに。」
「そうですか?いません。って答えたら、次は何でって大抵の人間が聞き返すので。」
継人の瞳は、相変わらず深く冷たい。
こんなやり取りの中で一つだけ解った事は、継人が凄く面倒くさがりな子って事。
今の台詞も、これ以上私に自分を詮索させない為の一種の防御壁の様なモノなんだと思えた。
まさか目の前の私が自分を捨てた母親だなんて、思いもしないでしょうけど。
ここでもし継人に私が母親だと告げたら、少しでも継人の冷たい心の氷が溶けるのかは解らない。
けど、私には自分が母親だと名乗り出る資格は無い。
「そっ。変な事聞いてごめんなさい。貴方明日から、ホスト辞めなさい。」
流石の継人も私の突然の解雇宣言に驚いたみたいで、持っていたグラスをコースターに戻した。
「急ですね。別に構いませんけど。」
「フフっで明日から本社勤めにします。そうね、先ずは市内のキャバクラを数店舗任せるわ。」
私は、継人に考える時間を与えたくなかった。賢いこの子に私の真意を悟らせない様にした。
「はっ?」
「君暇なんでしょ?私は、自分の経営しているお店の利益を上げたい。だから、君を本社の社員、しかも幹部として雇用するわ。」
流石の継人も、私の突然の雇用宣言に驚いていた。