継人は、グラスの中身を飲み欲すと、マスターに軽くお辞儀をしてその場を去ろうとした。
「チョット待って。もう帰るつもり?」
「はい。貴方の聞きたい事は、全てお話しさせて頂きましたし、特に俺は用は無いんで。」
我が子ながら正論ばかりを並べられると少しムカついたので、反論してあげた。
「別に会社の役職とか関係無く、貴方はBARに女性を一人残して帰る様なつまらない男なのね。」
継人は、私の台詞を聞くと少し苦笑いを浮かべて、マスターにおかわりを注文した。
「それは、失礼しました。勉強不足でした。それに変な人だ。」
「そう?解れば宜しい。それに、私から見たら充分君の方が変な人ですよ。」
マスターは、私達のやり取りを聞きながら可笑しそうに笑っている。
「二人共充分私から見たら、変人だよ。」
マスターは継人のお代わりと一言をコースターに乗せて私達を見つめた。
継人は、グラスに口をつけ一口飲むと私をジッと見つめた。
「そんなに見つめてどうしたの?」
「いや、なんか初めて会った感覚がしなくて。」
彼の一言に心臓が高鳴る。
私は、必死でそれを抑え込む。
「それは、君が女性を口説く時に良く使う台詞?」
「いや、そんなベタな台詞じゃ口説きませんよ。変な事言ってすいません。」
出来るだけ冷静に会話を続けた。
「リアさんは、良くこのBARに来られるんですか?」
「えぇっ。仕事終わりに少しお酒が欲しい時なんか良く来るわ。」
「リアちゃんは、このBARのオーナーでもあるんだよ。」
マスターが継人に、要らぬ豆知識を与えた。
「ふーんそうなんですね。流石東城グループのTOPなだけありますね。」
継人の言葉からは、彼の感情や真意が読み取りにくい。
私は、継人が何故ホストをしているか尋ねて話題を反らした。
「中村君に頼まれて、それに良い暇つぶしになりそうだったんで。」
中村君とは、マネージャーの事だ。
「暇つぶし?」
「そっ。俺自分で言うのも変ですけど、やりたい事とか将来の夢とかなくて。そんなんだから、残りの長い人生をどうやって潰すかいつも考えてるんですよ。ってやっぱり変人は、俺ですね。変な事を言ってすいません。」
継人は、少し微笑んでいるが、その若さでその考え方は、悲し過ぎた。
まるで、世の中に全く期待や希望を持ってない様子だ。
一体どんな人生を送ればそんな風な考え方になるのか、想像も出来ない。