それから私は、紗耶香の監視を佐土原に頼み、自分も出来るだけ屋敷を離れ無い様にした。
継人の存在に、危機感を覚えたのか、亮と成美は自分の家族と共に屋敷での生活を始めた。
紗耶香は、私が見る限りでは、凶行に走る気配も見せず、甲斐甲斐しく継人の面倒をみていた。
そんな、姿を見ているとまるであの事件の首謀者が彼女なのかと自分を疑ってしまうが、逆にそこが恐ろしくもある。
後日、東城氏から連絡が入り千尋の容体も安定したので、真実を話した事を知らされた。
そして、千尋も継人の身の安全を第一に考え暫くは、黒川家で様子を見る事に賛成してくれた様だ。
私は、屋敷の者を刺激しない為に過度に継人と接触する事を避けた。
継人が一歳の誕生日を迎える桜が散る頃に、東城氏から千尋がアメリカへ留学した事を知らされた。
継人は、順調に成長していった。
昔から、屋敷を長く空ける事が多かったが、今回は、紗耶香の事を懸念し出来るだけ屋敷を中心に生活を送っていたので、夕食の時に、紗耶香が嬉しそうに継人の成長の話しを私に話す姿を見て、これが本来の家庭の有るべき姿なのだろうと思えた。
紗耶香の言葉から、継人の順調な成長が伺えるだけで私は嬉しかった。
こんな感情は、長い人生で体感した事が無く心が満たされる。
時の流れは、速く、継人が三歳になる頃、佐土原から継人が亮や成美の子供から、苛めを受けていると報告をもらったが、私は心を鬼にして、それを敢えて不問にした。
継人は、紗耶香に依存していて紗耶香もその事に満足している様子だった。
継人、ただ見守る事しか出来ない私を許さなくて良い。
君の今の境遇を怨む気持ちを全て私や黒川の家に向けてくれ。
そして、出来れば今側にいない母親の千尋と、その原因を作った紗耶香を許してあげて欲しい。
継人が四歳になって直ぐの夏、千尋から真尋さん名義での手紙が届いた。
手紙の中で彼女は、私への謝罪と経緯はどうであれ、我が子を手放した自分を責めていた。
そして、紗耶香の事を怨む処か、心配していたのだ。
私は、直ぐに手紙の返信をした。
内容は、謝罪と継人の成長の様子と彼の今後についてを綴った。