東城氏と面会をしたのは、継人が黒川家に来て一週間が過ぎた頃だった。
佐土原の調べで、彼が紗耶香と何らかの取り引きを行っていた事は把握出来ていた。
それが、まだお腹にいた継人が関わる取り引きとも想像出来ていた。
彼と私は、一目を忍ぶ為、S市のホテルの一室で面会する事になっていた。
私は、自分が出来るだけ、利己的な対応が出来る様に冷静に努めていた。
指定された、部屋のドアを開けると、そこには、一人の酷く窶れた男の姿があった。
佐土原の話しでは、恰幅が良い男性だと報告を受けていたので、思い描いていたイメージとの差に少し戸惑った。
彼は、私が部屋に入る成り、真っ先に頭を床につけ、土毛座をした。
私は、少し困惑した。
彼に、頭を上げる様に勧めたが一向に私の話しに耳を貸さなかった。
「本当に申し訳ありません。私が弱かったばっかりに、この様な事態を引き起こしてしまいました。」
彼は、何度も同じ台詞を連呼しては、頭を深く床にこすりつけていた。
私は、部屋に設置されたソファに座り事情を説明する様に求めた。
彼は、ゆっくりと頭を上げて、赤く充血した鋭い瞳で私をじっと見つめた。
「千尋は、無事なんだね?」
「はい。今は病院で安静にしていますが、精神的なショックが大きく一時的な昏睡状態に陥ってるだけで、命に別状はありません。」
彼の言葉には、重みがあり、それが偽造では無く真実なのだと理解出来た。
「そぅか。色々君に聞きたい事もあるが先ずは、それを確認出来たので良しとしよう。」
私は、眼前に正座している彼を見下ろし、出来るだけ彼の感情を揺さぶらない様に言葉を選びながら話した。
「それじゃあ、君の話しを聞かせてくれないかい?千尋との事、紗耶香との事、そして、今回の件について。私は、あまりにも知らない事が多すぎる。君の話しを全て聞きたい。」
彼は、姿勢を崩さず、私の知りたかった事を一つ一つ丁寧に話してくれた。
話しを聞きながら、彼の態度や瞳の持つ輝きから、この東城誠と言う人間の人成りが感じ取れた。
彼は、真面目で真っ直ぐな愛情を持ったどこにでもいる一人の青年で、ただ真っ直ぐ過ぎる人間と言うのは、人に利用されやすいし、折れやすい。