「あっ!!!!!!!」
エリさんと過ごした時間を思いおこしながら、満足感にしたっていた。瞬間、ある事を思い出してつい声をあげてしまった。
「どうしたの?」
キンヤさんは、私の急な奇声に驚いている。
「サイン貰うの忘れてました。」
「えっ?」
「だから、エリさんにサイン貰うの忘れてました…」
そう、一般ピープルでミーハーな私は、彼女のサインを貰い忘れた事に気付き、深く後悔していた。
だって、芸能人ですよ。しかも、今や国民的スーパーモデルのエリさんを目の前にして、サインして貰わないなんて…
「ブッハハッハハッ。」
キンヤさんは、カウンターをドンドン叩きながら爆笑している。
「何がそんなに可笑しいんですか?」
「ぶっ、いやごめんごめん。流石笑美花ちゃん。」
笑いを一生懸命堪えて、褒められた?
そして、チャンスを逃してショボンとエリさんの飲んでいたカクテルグラスを洗っていると、笑いがおさまったキンヤさんは、私をジッと見つめた。
「ごめんごめん。継人も笑美花ちゃんも良く似てるよ。」
訳のわからぬ事を言い出した。
私が頭の上にクエスチョンマークを浮かべていると、
「二人共、何考えてるのか解らないとこがそっくり。」
妙に楽しげだが、私はあんまり意味が解らなかった。
「なら、また明日来るよ。サインの件は、俺からエリちゃんに電話しとくよ。」
キンヤさんは、ニコニコしながら私を残して、店を出た。
こうして、継人さんのいない、ミサキの月曜日の夜は、終わりを迎えた。
継人さんが居なくても、継人さんの存在を感じられた夜だった。
そう言えば、エリさんってまだ継人さんの事好きなのかな?
もし、そうならこのタイミングで強力過ぎる恋のライバル登場しまた。
神様は、きっと意地悪だ。
継人さんよりもずっと意地悪だ。
だって、昨日の出来事の後に、あんな綺麗な元彼女登場させるなんて…
そんな訳の解らない事を考えてしまった。
閉め作業を終え、1人帰り道、またコンビニのグラビアアイドルと目があった。
エリさん綺麗だったし、スタイル
も良かったなぁ。
それに比べて私は…
何で継人さんは、私にあんな事したんだろ?
やっぱり口封じの為なのかな?
一人になると不安だけが募っていく。
早く帰ってこないかなぁ。