人間って言うのは、俺が思っている以上に欲深いかもしれない。
例えば、良くこんな話しを耳にしないかい?
「母親(父親)に似ている人を好きになる。」
これって、良く耳に聴くフレーズだけどその原理まで解ってる人間って少ないし、科学的に明確に解明されてる訳でもない。
でも、その理由の中の一つに、遺伝子が強く関わっている。
遺伝子の中にヒト白血球抗原まぁHLAって呼ばれる遺伝子があるんだ。
これは、人間の免疫に関する重要な働きをするモノで両親から平等に一つずつ受け継いでいる。
HLAは他人を認識するのに重要な働きをして、フェロモンにも強い影響を与える。
まぁ組み合わせ自体は、幾万通りもあるんだけどね。
因みにこのフェロモンは、皆さんご存知で人の恋愛活動への影響力は、半端ない。
まぁ人間の脳の伝達形式を三段飛ばしぐらいやってくれる。
みすぼらしい町民が姫様に夜這いかけてしまったってぐらいの勢いぐらいあると思う。
一目惚れしやすい人なんかは、このフェロモンを察知する能力が高い人だ。
何故こんな話しをしたかって。
俺の中のHLAのしつこさに嫌気がさしただけだ。
木曜日の午後、一人の女性を訪ねて以前来た事があるH市の閑静な住宅地にいた。
呼び出しベルを押すと、以前より少し窶れている女性がドアを開け俺を迎え入れてくれた。
「突然すいません。お忙しい中時間を作って頂き、有難うございます。」
面識はあるが、少し他所しく挨拶をして彼女の家に入った。
客間に通された俺は、彼女が出してくれたCoffeeでカフェインを摂取して、ここ数日間フル稼働の脳に癒しを与えた。
俺が空港で買ったお土産のロールケーキを彼女に渡すと、瞳が期待に輝いてた。
その姿を見て正直少し安心した。
俺の中の彼女は、最後に見た時は、深い悲しい表示だったから。
彼女が冷蔵庫にロールケーキを冷やして帰って来て、俺が早速話しを切り出そうとすると思わぬ先制攻撃を食らった。
「貴方達には、申し訳ない事をしたわね。本当にごめんなさい。」
再開して十分も経ってない俺にまさかキングオフ謝罪の土下座をするなんて…
「顔をあげて下さい。俺が今日来たのは、確認と謝罪であって、後々頭を下げるべきなのは俺になりそうなので。」
彼女は、顔をあげて俺の顔をじっと見つめていた。
観察していたと言う方が正しいのかも知れない。
それにしても、あいつに本当良く似てる。