そろそろ、石化が解けてもらわないと困るので、彼女にもう一度口づけをした。
「不思議だなぁ。昔読んだ本に、姫の魔法を覚ますには、王子様の口づけが一番効果的だと書いてあったのだが。」
私は、悪戯な笑みを浮かべて彼女の小さな頭を優しく撫でた。
「麗人さんっ?」
奈美は、私の手を払いのけた。
どうやら、石化は解除されたみたいだ。
けど、少しご立腹の様子だ。
「なんだい?」
「私は、真剣に…」
彼女の台詞を遮る様にまた口づけをした。
「解ってるよ。有難う。」
そして、彼女の大きな瞳をしっかりと見つめてゆっくりと感謝の意を伝えた。
「もぅ…本当に解ってますか?」
「勿論。」
「なら、残り二週間私は、麗人さんにつきまといますからね。しかも、三回もキスしたのでその分は付けときますから。」
私達は、お互いに顔を合わせて笑い合った。
「ははっけどこんな叔父さんでいいのかい?」
「ふふっそうですね。まぁしょうがないですよ。私昔からあまり高望みしないタイプなんで。」
私の顔を見ながら戯けて答える奈美。
「なら、今日はもう帰ろう。君と違って老体の私の身体には、春の夜風は少し堪えるよ。」
「そうですね。もう少し桜もみたいですが、また今度にしときますか。あっそれと、私の事好きになってくれなくてもいいですから。あくまで二週間限定なので。」
奈美は、また戯けて話す。ただ、彼女と出会ってから間も無いが、彼女が嘘が苦手かなんて、鈍感な私にも解る。
こうして、私達二人の不思議だけど凄く愛おしい夜は幕を下ろす。
私達は、まるで自分達が犯す罪の重さに押し潰されない様に二人共不自然なぐらい明るくつとめていたのかもしれない。
そして、それは今後私達の生きる長い時間の中で、大きな罰を受けるという事を理解している事の現れだったと思う。
不謹慎かましれないし、他人から見ると少し理解し難いかもしれない。
けど、それでも構わない。私達二人が犯す罪とそれにより背負うべき罰を私達二人はきっと愛するだろう。
人が恋に落ちる理由なんて単純なモノだ、それぞれが持つ引力により引かれ合い、そして惹かれ合う。
その単純な法則には、時間や年齢等関係ないんだろう。