「ねぇねぇ麗人さん。」
隣の奈美の呼びかけで視線を桜から少し落とした。
「どうしたんだい?」
「ワシントンには、どれくらい滞在されるんですか?」
「そうだね。二週間程の予定だが。」
奈美は、私の滞在期間を確認した後ニヤニヤと何かよからぬ事を考えていた。
そして、
「あのですね。その二週間私に下さい。」
「うん?」
「だからですね。その二週間私に下さいよ。」
無邪気に笑いながら私にお願いをした。
「突然どうしたんだい?言ってる意味が良く解らないんだが…」
奈美の真意を聞き出そうと訪ねてみた。
「ふふっ。私解っちゃったんですよ。」
「何が解ったんだい?」
「私と麗人さんが何故出逢ったのか。」
奈美は、変わらずご機嫌だが、私は反対で対応に困ってしまう。
「君と私が出逢った事に何か理由があるのかい?」
「ありますよ。まぁ麗人さんだけじゃなくても、人と人が出逢う事全てに意味はあるんですよ。ただ、それは直ぐに解る事もあれば、ずっと解らないまま過ごす事もあると思います。」
私は、奈美とは少し違う考えの持ち主だったが、ここで自分の意見を述べて、わざわざ彼女の意見に水をさす気もないので、奈美の話しを黙って聞く事につとめた。
「だから、帰るまでの間の時間私に下さい。」
接続詞の使用方法に疑問を抱いたがそこは、敢えて伏せて彼女の真意をもう一度尋ねた。
「もぉーっ。本当鈍感ですねっ!」
奈美は、私の右腕を掴むと少し背伸びをした。
目の前に彼女の顔が近づく。
そして、目が合った瞬間、唇が重なり合う。
時間にするとほんの数秒だが、一瞬何が起きてるのか理解出来ずにいた。
奈美は唇をゆっくりと離し、踵を地面に着けて私の腕を離した。
「これで、少しは理解出来ましたか?今のは前払いです。」
彼女が言う様に鈍感なのか未だに何を言ってるのか解らない。
前払いって言うのは、先程から奈美が何度も頼んでいる二週間の事だろうか?
まるで私と彼女は、違う時間を生きているかの様にすら感じる。
その証拠に私の思考は、いつもの様に働かず、現状を整理出来ずにいる。