次の日の午後、私はここ数年看護の分野で高い評価を得ていたワシントン大学の視察に訪れた。
そう、本来なら千尋が今年から入学する筈だった大学だ。
臓器移植の研究をしている教授の資金援助を行っていた事もあり、彼の勧めで視察する事にした。
彼の研究室を訪れ、現在彼が研究している白血病の患者への骨髄移植への論文を拝見させてもらったが、この理論が確立されたなら近い将来、ノーベル医学賞を受賞してもおかしくないと思える程素晴らしい物だった。
「教授遅くなってすいません。」
「おぉ、ナミ!良く来てくれたね。来て早々すまないが、お客様にコーヒーを頼むよ。」
論文を夢中で読み返していた私は、一旦止めて、彼が私の視察の案内人の為に用意してくれたであろう生徒に挨拶をしようと扉の方へ、視線を移すと手際良く私達の珈琲を準備している後姿を確認出来た。
彼の事前の情報だと、彼の抗議を受けている看護科の生徒の中でも優秀で、しかも私と同じ日本人らしい。
ワシントン大学には、割と日本も含めアジア圏からの留学生も多く特に珍しい事ではない。
私は、視線を論文に戻した。
「はい。どうぞ。」
暫くして、珈琲の準備が整ったのか、声をかけられた。
論文に夢中だった私は、行儀悪く視線は、そのままでカップを掴んだ。
「貴方がそんなに夢中になるなんて、珍しいですな。」
「あぁっ。それ程凄い発見だよ。今までこんな治療方があるなんて考えもしなかった。完成が待ち遠しいよ。」
「ははっ有難う。夢中のところすまないんだが…今日のナビゲーターを紹介したいんだが。」
私は、右手に掴んでいた論文をテーブルの上に置いた。
そして、左手に持ったままのカップに口をつけた瞬間だった。
「あっ!!!!!」
研究室に若い女性の驚いた声が響き渡る。
声の主を見た私は、カップを落としてしまった。