そして、痛みを充分に味わうと腰の辺りにある男の耳を掴み強く捻じった。
男は、一瞬の痛みに伏せていた顔を上げた。
その瞬間、手の甲で鼻をへし折り男の鼻から勢い良く血が吹き出し、私を掴んでいた手を離し、膝をつき鼻を抑えながら防ぎこむ。
その様子を見て、一瞬怯んだが他の二人が勢い良く同時に私に勢い良く向かって来たが、私は、半歩左へ動き、勢い良く向かって来た一人の足を掛けてバランスを崩す所に掛けた右足を引き、その足を軸にして左足でバランスを崩す男をもう片方の男の足元に転ぶ様に蹴飛ばした。
勢い良く突っ込んで来た二人は、そのまま地面へと倒れ込む。
私は、その大きな頭が転がっている方へと移動し両手で彼等の髪を顔が地面から20cm程浮く程引っ張り何度も地面へと叩き着けた。
やがて、鼻が折れる音を確認すると手を止め、足元に転がる三人を見下ろした。
三人共、酷く怯える様に私を見上げていた。
まさか、自分より遙かに小さく老いた私が幼い頃から護身用に佐土原から武術の指南を何年も受けていた等彼等が知る筈もない。
相当困惑している様子だ。
「何してるのコッチ!」
彼等を見下ろす私の、右手を強く引っ張られた。
私は、言葉に素直に従いその場を後にした。
どれくらい走っただろう。
流石に、先程の様に最小限の動きと違い走るには、年を取り過ぎていた。
公園の入り口に着くと彼女は、手を離し私の前に立ち塞がった。
そして、右手を大きく上げて私の頬を引っ叩いた。
一瞬何が起きたのか理解出来ななかったが、叩かれた頬の痺れと痛みで自分が助けた女性に平手打ちを受けたと理解した。
「何考えてるんですか?」
女性は、酷く怒っている状況だ。
彼女の態度に困惑した。
「いや、君を助けようと…」
私が弁解しようと話そうとすると今度は、左手で先程とは逆の頬を引っ叩かれた。
「やり過ぎです!もっと自分も人の事も大切にして下さい。」
そう言って私に背を向けた。
あまりの出来事に身体が動かない。
彼女は、私を残し一歩、一歩歩を進める。
街灯の辺りで立ち止まると、急に降り返り、ニコッと恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
「でもスッキリしました。助けて下さって有難うございます。」
私は、まだ動けずにいた。
別に平手打ちのせいでも状況が理解出来ずに困惑していた訳でもない。
街灯に照らされた彼女の姿は私の愛した女性だったからだ。