火曜日の朝、俺はミュンヘンにある大学病院を尋ねていた。
「やぁ、君が継人かい?」
大らかな髭づらの初老の男性が待ち合い室のドアを開けた。
この、髭づらの男性は、世界的な名医で、今はこの大学病院で名誉教授をしていた。
「はじめましてドクター。急にお時間作っていただき申し訳ありません。」
俺は、軽く頭を下げ、ドクターが差し出してくれた大きな手を掴み握手をした。
「ははっ気にしないでくれ。懐かしい友人の孫がこうして、遠いミュンヘンまで尋ねてくれたんだ。」
そう、ドクターは、生前の麗人の友人の一人で、俺がわざわざドイツを尋ねてでも会いたい人物だった。
「そう言ってもらうと、助かります。実言うと、ドクターに至急お渡ししたいものがあって。」
俺は、ポケットから封筒を出しドクターに手渡した。
ドクターは、俺から手渡された封筒の中身をチェックすると、一瞬顔が綻んだが、すぐに俺に疑いの目を向ける。
「これは?君は一体何をしにこんなミュンヘンまで私を尋ねて来たんだ。」
「そんなに警戒しないで下さい。それは、私からの細やかな送りモノです。どうぞ、明日の夜はお孫さんでも連れて楽しんで来て下さい。」
俺が手渡したのは、明日のCLの試合のチケット二枚だ。
彼は、俺の笑顔をじっと観察すると、大声で笑い始めた。
「ははっ、君は外見だけではなく、その準備の良さを見る限り、性格も麗人そっくりだ。」
「麗人の昔からの友人の方々には良く言われます。ただ、彼よりも、私の方が少し気がきいてると思うのですが?」
俺は、余裕の笑みをドクターに向けた。
「良く私が大のサッカー狂だと調べたね。しかも、このチケットは、プレミアがついて国内では既に手に入るのは、不可能だったんだ。」
「ドクター、今はドクター程の著名人なら、インターネットで検索すれば、それなりの情報は手に入りますよ。ただ、ドイツ語に明るくない私が、ドイツ語の記事やブログを理解するのが難しかっただけです。」
俺は、ポケットに入れていたスマートフォンを出してドクターに見せた。
ドクターは、なる程と、長く伸ばした顎鬚を撫でながら感心している。
本当、便利な時代になったモノだ。
お陰で2人の距離を一気に縮める事に成功した。
因みに、欧州諸国、特に西ヨーロッパのサッカー大国のサポーターは、我が国のアイドルおたくに負けない程の情熱と狂気を持ち合わせている。