話しが一通り終わると、ゴリラは、何やら、部屋中をゴソゴソと探り始めた。
「何やってんの?」
「いや、久しぶりの再開だから、手の混んだドッキリだと思って今隠しカメラを。」
俺の口から、信じ難い真実を知ったゴリラは、現実逃避をしているみたいだ。
「誰も、そんな面倒くさいことしないぞ。」
「だよな。」
ゴリラは、現実に戻り静かにソファに座った。
ゴリラの隣にいる子犬は、何やらブツブツ口ずさんでいた。
「ふざけんなよっ!!!」
いきなり大きく吠えて、グラスの中に残された、ウオッカを一気に飲み干した。
「何だよそれっ?意味解んねぇよ?」
「落ち着けって。」
先程まで、現実逃避していたゴリラが隣で、怒り散らしてる子犬を宥める。
俺は、ただ黙って、その光景を見ていた。
「落ち着けるかよ。これが、真実だったら、誰も幸せになれないじゃん。真央、お前この話し聞いて良く冷静にいれるなぁ?」
「俺だって、凄ぇムカついたし、腹の中に何かモヤモヤしたモノが湧いて来て、今にも怒り狂いたいぐらいだ。」
「じゃあ、何で?」
「当事者の継人が、こんなんだからだよ。一番怒っただろうし、一番辛かったんだぞ。それなのに…」
二匹は、ソファに座り、タバコに火をつけた俺を見つめた。
「俺もさぁ、日記読んだ時は、凄くムカついたし、戸惑った。けどそれ以上に、黒川麗人って一人の人間が酷く哀れに思えてな。別に誰かを不幸にしたくて、麗人は、生きてたんじゃない。むしろ、自分を犠牲にして、大切な人達の幸せを守りたかっただけなんだよ。」
俺は、出来るだけゆっくりと、興奮気味の二人(特に子犬)を刺激せぬ様に、優しい口調で話した。
「そんなの、俺だって解ってるよ。けど…」
「けど?」
「俺がムカついてんのは、神様にだよ。」
思いもよらぬ、発言に俺とゴリラは、少し戸惑った。
子犬は、その大きな瞳に精一杯の涙を溜めながら、話しを続けた。
「だって、みんな幸せになろうとしてただけじゃん!誰も悪くないのに、みんな傷ついて。だから、本気でムカつくんだ。」
餓鬼みたいな事を真剣な顔つきで語る姿を見て、何だか少し嬉しかった。
多分、こんな性格だから、今でもこんな俺の側にいてくれるんだと、改めて確認出来たから。