お話し好きの二人の会話は、リズム良く、明るい笑い声は、一種の幸福のBGMの様に広い客間を包み込む。
千尋は、本当にこのお屋敷を気に入った様子で、屋敷中の天井に設置されてる豪華なシャンデリアや、屋敷の随所に見られるロココ調の家具、客間に飾られた鮮やかな風景画等に心を魅力されている様子だ。
二人は、ソファから立ち上がると、飾られた風景画を真尋さんの解説と共に鑑賞を始めた。
真尋さんは、おとぎ話を小さな子供に読み聴かせる母親の様に丁寧に一枚一枚解説してくれていた。
「この、写真は真尋様のご家族ですか?」
「えぇ。随分昔に撮った写真だけど、私にとっては、この部屋に飾られたどんな名画よりも、愛しく、大切な一枚なのよ。」
二人は、ある一枚の飾られたモノクロ写真の前で足を止めた。
「素敵なご家族ですね。後ろの三人はご子息様ですか?」
「そうなの…三人共ハンサムでしょ?けどここ数年は、忙しいのかこの屋敷にも足を運んでくれなくなったわ。」
「はい。とてもハンサムです。右端に写ってる方なんて凄く優しそうですね。」
「お楽しみの最中申し訳ないが、そろそろホテルのチェックインもあるし、千尋、ミケルさんに車を手配してもらってくれないか。」
真尋さんの、小さな異変に気が付いた私は、慌てて二人に駆け寄り、千尋を客間から外した。
「大丈夫ですか?」
写真を愛しそうに見つめる真尋さんに、声をかけた。
「すいません。余計な気を遣わせてしまいましたね。」
「いえ、今日は一旦ホテルの時間もあるしこれで失礼します。」
「そうね。遅くまでお付き合いさせて申し訳ないわね。ミケルに車を出させるわ。さて、笑顔で二人をお見送りしないどね。」
私達も、千尋の後を追う様に、客間を後にした。
写真の中で、優しく微笑むケイトを残して。