ケイトは、手紙で私の事をどう記していたのか気になるが、それよりも、彼が千尋と私の存在を真尋さんに伝えてくれていたおかげでこうして、今の私達があるのだ。
正直、初めてハワード家を訪れた日は、初対面に近い私の話しをどれくらい信じてくれるか不安だった。
真尋さんが、私の事を信頼してくれたのも、ケイトが出してくれていた一通の手紙のおかげだ。
ケイト、君は、本当に紡ぎ手だね。
千尋がこうして、今君が育った家に訪れる事が出来たのも、いや、今までの18年も、君が生きた過去が紡ぎ出した未来なんだね。
「ごめんなさいね。手紙の事をお話しするのを忘れていて、ビックリされたでしょ?」
「いえ、少し驚きましたが、全部納得しました。本当に良いお子さん、いや、良い男ですね。ケイトは。」
手紙の事で、私に少し申し訳なく謝る真尋さんに、私は、苦手な笑顔を作った。
「フフッ、本当に優しいお方ですね。ケイトもそんな貴方だから慕い、こうして千尋を託したのでしょう。」
真尋さんは、また私の心情をさっしてくれたのか優しく肩に手を添えてくれた。
本当に、優しい方だ。
「二人共何をなさってるの?」
どうやら、散歩から戻って来た千尋は私達の姿を見て、私達二人の間に流れる空気の違いに気づいたようだ。
「なんでもないのよ。散歩は、楽しめたかしら?」
「ええっ、庭園のアメリカフヨウの花が素敵でした。」
「有難う。さっ二人共座って、アメリカの婦人のティータイムは長いのよ。」
真尋さんと千尋は、楽しそうに庭園の話しや、屋敷の話し等楽しそうに会話していた。
この時を本当に楽しみにしていたのだろう。
真尋さんの言葉や瞳に、千尋に対しての温かな愛情を感じ取れた。
そんな、二人を、口下手な私はただ黙って見守ることしか出来なかったが、心の底から良かったと思う。
そして、本来なら、千尋の横に座っているのは、こんな口下手な私ではなく、ケイトだったんだと思うと少し、寂しくも思えた。