私は、黒川家から遠ざける為、千尋が小学校を卒業すると、東京にある全寮制のエスカレーター式の女学校に進学させることにした。
この時、千尋が黒川家を離れる事に強く反抗した事に少し驚かされた。
しかし、月一回の面談に必ず会いに行く事を約束すると渋々了承してくれた。
私は、千尋との約束を守り、月に一回必ず彼女に会いに行った。
千尋は、嬉しそうに、学校の友達の話し、今読んでいる小説の話し等を嬉しそうに私に話してくれた。
あの小さかった命も、今や聡明で明るい一人の女性へと成長してくれていた。
千尋は、本当に良く笑う子で、そんなとこは、多分ケイトに似たのだろう。
本当に私の事を良く慕ってくれていた。
ただ、私の胸には、常に彼女に対しての一種の後ろめたい気持ちがあった。
ケイトとアルマが手にするべき幸せを私は、ただ代理として手にしているだけなのだ。

アメリカから帰った私は、その足で千尋の面会に向かった。
「お父様っ?」
何時もの様に寮の玄関で私を待っててくれていた。
私を見つけるなり、駆け寄り私に抱きつく。
幼い頃から、彼女はいつもそうだった。
私が仕事で家を空け、帰ってくるといつもこうやって私に抱きついてきた。
「コラコラ、淑女がはしたない。」
抱きつく彼女の腕を優しく解く。
「別に、はしたなくても構いません。だって嬉しいんですもん。」
いつもと変わらずニコニコ笑い、私の注意も気に留めてない様子だ。
「それよりも、準備は出来ているのかい?」
「勿論ですわ。お父様と初めての旅行ですもの。」
「旅行って大袈裟な。来年から進学する大学の下見とホームステイ先のハワードさんの御宅へ挨拶に行くだけだよ。」
「お父様、世間では、それを旅行と言うのですよ。」
そう、私は、アメリカから帰って来てまた今度は、彼女を連れてトンボ帰りするのだ。
手間も時間もかかるが何かと準備が必要だった。