心地良いR&Bのリズムに包まれる店内。
お店の閉店時間の12:00に間もなく差し掛かろうとした時、本日最後になるだろうお客様がタイミング良く?ご来店。
「いらっしゃいませ。すいませんが平日は、12:00までなんですよ。」
「ごめんなさい。あらっ?随分可愛らしいマスターさんだこと。」
彼女は、私を見て、フフッとセレブな微笑みを浮かべた。
長い綺麗な黒髪を一本にまとめ、薄い白のカーディガンに、細めのスキニーのデニムに、黒のロファーと地味な格好に反して、白人の様に白い肌と、長めの睫毛の下にある大きな緋色の瞳が輝く。
「あっ、すいません。私はただのバイトで、このお店のマスターは今日は、ついさっきバイトの私に閉め作業を任せて、外出しました。」
「そうなの?丁寧に有難う。」
不思議な空気の人だった。
大体この店の9割の女性客は、継人さん目当てなのだが彼女は少し違うみたいだ。
「もし迷惑じゃなければ、一杯だけいただけないかしら?」
「えっ!?・・・・なら一杯だけで良かったら」
思いもよらぬ、彼女の提案を何故だか拒否できなかった。
これが、美人だけがもつ事を許される「WAGAMAMA」と言うモノかと考えながら彼女の注文した、カンパリのリキュールをロックグラスに注ぐ。
カウンター越しに、自分を見つめる視線と目が合う。
「あのーっ・・」
「ごめんなさい。継人の話しで聞くよりも可愛らしくてつい。」
「えっ?継人さんの知り合いなんですか?」
「フフッ御免なさい。隠すつもりはなかったのよ。」
こうして、私と謎の美人なお姉さんの短くも不思議な夜が始まった。