それから、現地に滞在中は、時間があるときはこうして、ケイトとお酒を交わすようになった。
時には、ケイトの家に招待され、奥さんの手料理をご馳走になることもあった。
ケイトは、いつも笑顔で、会うたびに、愛妻と愛娘の自慢話しを幸せそうに口にしていた。
私も彼みたいに、幸せな家庭を築くことが出来ればと心の何処かで、後ろめたい気持ちがあった事にケイトはきづいていたのだろう。
「麗人、君には君にしか紡げない物語があるんだ。だから、自分の今までの人生を悔いる必要なんてない。」
何度も私を励ます言葉をかけてくれた。
華奈や紗耶香のことで深く、疲れていた私には、ケイトとその家族の存在は暖かい温もりを感じれる尊いモノだった。

ただ、神様は、そんな尊い存在すら簡単に奪い去る。

滞在最終日、私は現地のスタッフに連れられ、街から少し離れた軍のベースキャンプの医療施設に視察に訪れた。
視察も滞り無く終わり、いざ街に戻ろとすると、キャンプにいる軍人の様子が慌ただしい。
異変に気づいた私は、視察に同行していた、軍の責任者に状況の説明を求めた。
彼は淡々とこの状況を私に話してくれたが、話の途中に、スタッフから強引に車のキーを奪い、私は走った。

車にキーを刺し、そんな私の行動を制止しようとしていたスタッフや軍人を無視して、アクセルを強く踏み込んだ。
暫くすると、街のいたるところから煙が上がっている風景が目に飛び込む。
街と人が焼かれた時の、独特の匂いが鼻をさす。
街につくと私は、一目散にある一軒の小さな家を目指して走った。
昨晩、帰国することを告げた私をささやかだが、自慢の奥さんの手料理で見送ることを約束してくれた友人のもとへ。