視察の際中、戦争の被害者達がベッドに横たわる姿を産まれたばかりの赤子を背負いながら真剣な目でシャッターを押している彼を見つけた。
そんな、彼の姿が私の好奇心を強く揺さぶった。
「君は今何をしてるんだい?」
好奇心に負け、彼に声をかけてしまった。
しかも日本語で…
一見、肌の色から東アジアの人だとは解るが、日本人とは限らない。
しかもその頃は、戦況が悪化していてとてもカメラマンとは言え日本人の入国と滞在は、アメリカの元、厳しく規制されていた。
彼は私が話しかけると 「ウン?」と目を丸くして振り向き、シャッターを押す手を止めた。
私は慌てて英語で言い直すと、
「ははっOKOK。日本語解るよ。」
屈託の無い笑顔で答えた。
「それは良かった。いきなり話しかけてすまない。じゃあ改めて君は何をしてるんだい?」
「俺はしがないフリーの戦場カメラマンで今はその仕事中なもんで。それともポルノ写真を撮ってる様にみえました?」
男はジョークを交えながら私の問いに答えた。
「いや…」
彼の背中の赤ん坊に視線を移す。
どうやら私の質問の意図に気づいたのか、頭をかきながら 、
「ははっそう言うこと。この子は産まれてまだ三週間の可愛い愛娘で、これまた愛しのワイフがお仕事で忙しくて俺がベビーシッターしてるの。確かに一見変だよな?」
首を傾げながら少し考える素振りをして見せたが
「まっシッターもシャッターも好きだから良いかな?」
と能天気に笑いながら答えた。
心の中で、つまらないギャグだと思ったが彼の笑顔につられて私も笑ってしまった。
時代が時代でもあったし、仕事も関係するのだろうが、当時私の周りでこの時代にここまで能天気な人間はいなかった。
日本では、戦後の経済回復の為にみんな一生懸命働き、世界では戦争から得る利益の取り合いで私も含め、みなどこか暗かった。
しかも、私は紗耶香の一件以来、仕事に逃げてたし、心を許せる相手が周りにはいなかった。
「いきなり話しかけてすまなかった。私の名前は黒川麗人。しがない薬売りさ。」
「俺は、ケイト・ハワード。よろしく。」
遅い自己紹介を済ませた私達は、その夜時間を作って会う約束をしてお互いの職務に戻った。
私は、しがない薬屋で彼はベビーシャッター?に。