半年後、佐土原は、生後二週間の男の子を見つけてくれた。
その子の父親と母親は、重度のアルコール中毒で疎ましく思っていた産まれたばかりの幼子の親権を僅かなお金と引き換えに喜んで手放した。
子供を引き取る為二人に会った時私は、嫌悪感を覚えた。
それは、子供の意思とは関係なく大人の勝手な都合でモノの様に扱う自分達が、華奈を嫁がせた親戚と全く同じだと思えたからだ。
それでも紗耶香の治療の為に私は、自分の感情を押し殺した。
紗耶香は産まれたばかりの赤子と対面した時涙を流しながら私に感謝したが、私から自分に対しての嫌悪感や罪悪感が消える事は無かった。
そして養子に迎えた男の子に紗耶香は亮と言う名前を授けた。
こうして、無事退院した紗耶香と亮は、黒川家に戻り皆に祝福された。
それからの紗耶香は、育児に没頭し前と変わらず、精神状態も安定していた。
ただそれは、私の錯覚でしか無かった。
「私今度は、女の子が欲しいわ。お願い貴方今度は女の子を貰って来て。」
紗耶香の誕生日一週間前の夜、彼女はまるで誕生日のプレゼントをねだる子供の様に無邪気に笑いながら話す。
そんな彼女の笑顔が、あの日病室で不気味に笑う彼女と重なった私は、背筋が凍る思いをした。
私は、彼女のこのお願いを聞き入れるかどうか悩んだ。
だが最終的にその年、また私は産まれたばかりの女の子を養子に貰った。
それが成美だ。
それから、数年は紗耶香も何も言わなかった。
きっと満足したと思っていた。
ただ人間の欲は止まる所を知らなかった。
亮も成美も小学生に上がり彼女の手を離れるとまた私に、彼女は子供をねだる。
仕事を理由に、彼女を遠ざけていた私は彼女の要求にただ答えた。
こうして次男の匠を養子に迎えた。
これが最後だと思っていた。
匠を養子として迎えた翌年、私は仕事で中東のある戦地を訪れていた。
そこでは、今も尚目の前で人が死ぬ事が当たり前で、人の命の儚さを改めて確認できた。
その戦地で私は、ある一人の男性と出会う。
彼は、フリーの戦場カメラマンをしていて現地のボランティアスタッフと結婚し産まれたばかりの赤子と家族三人で戦地の中でも細やかに暮らしていた。
彼との出会いは、現地の病院だった。
私は、戦地の人々に投与していた新薬の成果を確かめに病院を訪れていた。