何度聞いても胸が痛み涙が出そうになる。
「けど本当あの時はびっくりしたよ!」
当時を振り返りキンヤさんはまた話す。
「あぁ雨が降り始めても継人が中々帰ってこないから心配して二人で継人迎えに行ったな…」
「うん。どしゃ降りの中ずぶ濡れの継人見つけた時は何て声かけていいか解らなかったよね。」
私は、ただ黙って二人の話しを聴いていた。
「俺もだよ。そしたら継人の奴俺ら二人見つけると『悪い…美咲死んじゃってたよ。』って頭下げてさ。」
「うん…俺達二人共継人が病院から出てきた時の顔見てそんな予感してたんだけどね。」
二人の表情に影が見える。
哀しい過去の話しを話す二人は、私がいるからか出来るだけ気丈に振る舞ってるみたいで本当はもっと悲しい表情になるんだと思う…
「だな。で帰りの車の中でも俺達二人が『大丈夫?』か尋ねても、『もう大丈夫だよ。』って笑って答えるしさ。」
「継人は昔からそうなんだけど、多分俺達にこれ以上心配させたくなかったと思うよ。俺も真央もあの時は、動揺してたし…」
「あぁ…たまに思うよ。俺達があの日あんな事しなければ継人が哀しみを背負う必要なかったんじゃなないかって。」
「そんな事ないですよ!」
私は、二人の会話を遮る為に大きな声で真央さんの言葉を否定した。
二人は、私が急に大きな声を出したからビックリしている。
真央さんは、額を少しかきながら
「そうだな。ごめんな変な事言って。」
私に謝った。
「継人さん、昔私に二人の事『あいつら二人は最高の仲間だよ。』って言ってましたよ。」
二人に昔継人さんが酔っ払って口にしてた言葉を伝えた。
本当は、その台詞の前に、キンヤさんの事は盛りのついた子犬でキャンキャン煩くてたまにしつこいって言ってたし、真央さんの事は、ボスゴリラが人の言葉を覚えて人間社会に混じって生活してるって言ってたけどその事は敢えて伏せた。
「そっか…ありがとう。笑美花ちゃん。」
キンヤさんはまた私に優しく微笑みかけてくれた。
「本当、いい子だよね。」
真央さんも笑顔になり二人の表情から暗い影が消えた。
その影は二人、いや継人さんも含めて三人が生きてる限り消える事はないんだとなんとなく解る。