「ちょっと待ってて…飲み物取って来るから。」
そう言ってクラブのカウンター席に座る俺を残し人ごみに消えた…と思ったら
「逃げないでよ!」
振り返り俺を指差す。
昔と変わらないキンヤを見て久しぶりに胸の奥に熱が灯り始めた。
「よっ…」
人ごみの中から一際大きいゴリラの様な男が俺を見つけて近づいて来る。
「…なんだ真央かぁ。」
「相変わらず腑抜けてんなぁ。」
「そうだな…」
俺が答えた瞬間、自分の身体が宙に浮いた。
カウンターの奥の棚にぶつかりその衝撃で瓶が何本も落ちた。
そしてその音は、クラブ中に響き渡りやがて騒がしかった人も音楽も止み静寂の中、
「そんなになるぐらい自分痛みつけて楽しいかよ?美咲ちゃんの事を忘れられなくて苦しいんだろ?辛いんだろ?会いたいんだろ?」
卒業式と同じ様に俺に噛みついていた。
俺は、瓶の破片だらけの床から立ち上がり
「前も言っただろ…同じ事言わせんなよ。相変わらず馬鹿だなぁ。」
手にした酒瓶の破片を真央の首筋に向けた。
「ちょっ?!何やってんの二人共!」
人混みをかき分けキンヤが現れた。
「俺が聞いてんのはそんな大人染みた答えじゃねぇぞ!」
真央は、首筋の瓶の破片に臆することなく俺を睨み付ける。
「美咲ちゃんがどう考えてるとかは、そんなの俺もキンヤも関係ねぇよ…けど継人、俺はお前がどうしたいか聞いてんだよっ!」
キンヤに灯された胸の熱は、真央の叫びで高温へと変わった。
そして、その熱は俺の身体全体を巡り、瞳から涙が零れ落ちた。
そして涙が1つ零れ堕ちる度に俺の中の理屈や見栄も消えていった。美咲と向き合う事が恐かった。
何も言わず俺の前から消えた美咲の真実を知るのが恐かった…
真実を知る事よりも自分で勝手に理屈付けて傷ついたふりをしてただ逃げてただけだった。
「俺は会いたいよ。ただ美咲に会いたい…」
溢れる涙を止めて手にした破片を離しその場に力が抜けた様に座り込み、今まで逃げて来た真央の問いに答えた。
座り込む俺に二本の手が差し出された。
「なら継人のわがままに付き合うか。」
「しょうがないなぁ♪今日は俺が主役なのに。」
顔を上げると真央とキンヤがニヤリと笑っている。
俺は、二人の手をしっかり掴み立ち上がった。
「っうか今から?」
昔みたいに二人の友人の急な思いつきにツッコミを入れた。
「yes!」
「yes!」
昔と変わらないGoodjobポーズを取り、息ぴったりに俺のツッコミなんて気にしない仲間の姿が瞳に映る。
そして、俺達三人は美咲探しの旅に出ました。
めでたしめでたし。