車のスピーカーからは3日前H市で起こった悲惨な交通事故の様子を他人事の様に話すキャスターの声が漏れていた。
三時間前に真央に殴られた頬が今頃になって痛む。
「っうか殴る事ないだいろ?」
「卒業式のお返し♪」
真央は、車を運転しながらも俺の小さな愚痴をしっかりキャッチしていた。
「それにお前の場合殴られないと解んないだろ?」
真央は、まるで俺の今の気持ちを察しているかの様だ。
「俺は、お前みたいに筋肉馬鹿じゃないから殴られなくても解るよ…」
心の中では全部解っていた。
こいつに殴られて俺が今まで必死に取り繕って来たモノが一瞬に壊れて最後に残った自分の本当の気持ちを吐き出した事も。
けどそれを正直に認めるとなんか悔しい。
「美咲ちゃん元気にしてるかな?」
俺の隣でクリスマスのサンタさんを待つ子供みたいに目を輝かせるキンヤがいた。
「悪いな…お前の誕生日パーティー台無しにしてしまって。」
俺は、隣でトキメク無邪気な少年に謝った。